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No.5
狼達との邂逅

【シナリオデモ開始】
北米地区 コロラド
テスラ・ライヒ研究所 超機人ケージ
エリ「え……? アースクレイドルへ戻れなくなった?」
ソフィア「ええ。事後処理はミタール・ザパト博士のチームが単独で担当することになったわ」「今思えば、あの後すぐに彼が私をこのテスラ・ライヒ研究所へ向かわせたのは……」「私をアースクレイドルから完全に引き離すための策だったのね」
ジョナサン「ミタール・ザパトか……。噂ではツェントル・プロジェクトとやらの主幹を務めているらしいが」
エリ「ツェントル・プロジェクト?」
ジョナサン「連邦軍の管轄下で進められている計画らしいんだが、詳細はわからない」「メンバーの大半が非EOTI機関、非DCの人間で占められているようなのでね……伝手がない」「だから、こっちに情報が入ってこないんだ。ウチからの引き抜きもやってないし……」「マオ・インダストリーやイスルギ重工の関係者や出身者もほとんどいないんじゃないか?」
エリ「そうなのですか……」
ジョナサン「アンザイ博士の知り合いの中で、そっちに引っ張られたと思われる人間は?」
エリ「いえ、いません」
ジョナサン「ふむ……あからさまな秘密主義が気になるがね、今回の処置は軍上層部からの正式な命令なんだろう?」
ソフィア「ええ……」
ジョナサン「なら、今の所は調べようがないな」
エリ「アースクレイドルでいったい何をやっているのかしら……?」
ソフィア「……ザパト博士の狙いはクレイドルの中枢コンピューター・メイガスとマシンセルかも知れない」
ジョナサン「だが、その二つは機能を停止しているんだろう?」
ソフィア「……はい。ゼンガー・ゾンボルト少佐やクロガネの皆さんの手によって」
ジョナサン「ツェントル・プロジェクトの動向については、折を見てギリアム少佐に尋ねてみよう」
ソフィア「お願いします」
エリ「ソフィア……これからどうするの?」
ソフィア「手元にあるアースクレイドル関連のデータを再検討して、プロジェクト・アークの見直し作業を続けるわ……」「先行きがどうなるかわからないけど、月にはクレイドルがもう1基あるし……何かの役に立てれば」
ジョナサン「そういうことなら、引き続きテスラ研に居てもらって構わないよ」
ソフィア「よろしいのですか?」
ジョナサン「その代わりと言っては何だが、今度二人で食事を……」
エリ「……カザハラ所長」
ジョナサン「ゴホン。ともかく、次の行き先が決まるまでここに居てくれたまえ」
ソフィア「はい、ありがとうございます」
エリ「ねえ、ソフィア。合間を見てでいいのだけど…私の仕事を手伝ってもらえないかしら?」
ソフィア「もしかして、超機人関連の?」
エリ「ええ。インスペクター事件が終わってから、彼らは見ての通り休眠状態にあるの」「パイロットのブルックリン・ラックフィールド少尉やクスハ・ミズハ少尉の意向もあって……」「龍王機と虎王機を休ませるために解析作業を中断していたのだけど、少し様子が変なのよ」
ソフィア「変?」
エリ「眠っているというより、仮死状態に近いのかも知れない。もしかしたら、このまま目覚めない可能性も……」
ソフィア「……」
エリ「だから、ブルックリン少尉とクスハ少尉の了承を得てから、解析作業を再開しようと思っているの」「そこで、あなたがアドバイザーになってくれると助かるのだけど……」
ソフィア「よくてよ。……私とあなたは大学の同期だもの。力になるわ」
エリ「ありがとう、ソフィア」
ジョナサン「君達二人が同じ大学の出身だということは知っていたが……専攻分野が違うだろう。どこで知り合ったんだ?」
エリ「私達、探検同好会に所属していたんです」
ジョナサン「探検?」
ソフィア「ええ。色々な洞窟や廃墟へ行きました」
エリ「サバイバル訓練とかもやったわね」
ソフィア「そうそう、あの時は大変だったわ。雨に降られて、泥だらけになって」
ジョナサン(……その頃からバイタリティがあったんだな、この二人は)

地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地

アビアノ基地内
ラミア「……お待ちしておりました、少佐」
カイ「話はラーダから聞いている。わざわざすまんな、アビアノまで」
ラミア「いえ。インジリスクと同様の事件が、また起きる可能性もありますので」
カイ「そう何度もあんなことがあっちゃ敵わんよ。……ところで、改型は?」
ラミア「昨日、3機とも当基地へ到着し……第23格納庫内にて機動セッティング中です」「なお、オルレアンからの伝達事項では、F2Wビームキャノンを2挺……用意しまくったとのことのようなのです」
カイ「1挺足らんな。では、クライウルブズに回してやれ」
ラミア「よろしいのですか?」
カイ「俺の機体はダブル・バックラー仕様だからな。長物は持ってきた奴を使うさ」
ラミア「了解です。クライウルブズからはパイロットが2名、機体を受領するために来ていますが……」「少佐もすぐに改型を?」
カイ「ああ。後で土産物を買う時間が欲しいんでな」

アビアノ基地 格納庫
ヒューゴ「これが量産型ゲシュペンストMk-II改……」
アルベロ「堅実的な改造機だな。骨太な感じが気に入った」
ヒューゴ「ゲシュペンストを使い続けてきた我々にとっては使い易そうな機体ですね」
アルベロ「ああ。スペックノートを見る限りでは、操縦感覚もそう変わるまい」
ヒューゴ「……ところで、隊長。本当に自分がこの新型へ乗っていいんでしょうか?」
アルベロ「適性検査で俺とお前が改型のパイロットに選ばれたのだ」
ヒューゴ「しかし、自分は……」
アルベロ「マオ社は意図的に戦闘時間が長い者と短い者を選んだようだが……」「サバイバビリティと実戦での機体損耗率も基準になっていたと聞く」
ヒューゴ「自分の場合は……逃げ足の速さが評価されたということですか」
アルベロ「そう卑下するな。マオ社の判断は的確だ。自信を持て」
ヒューゴ「ですが、イーサン少尉達の手前もあり……」
アルベロ「……単に戦闘能力が高いだけの者なら、他の部隊にいくらでもいる」「しかし、クライウルブズに要求されるのは任務の完遂と死地からの生還だ」「死は他人にとって何らかの意味を与える場合もあるだろう。だが、自分自身にとっては無意味だ。己の死から学び得ることは何もない」「任務を成し遂げ、生に執着する。それらは常に均衡でなければならない」
ヒューゴ「……」
アルベロ「お前はまだ経験が少ない上に荒削りな部分も多いが……バランスを保てる素質がある」
ヒューゴ「フォリアもそうでありましょうか?」
アルベロ「……ああ。だが、己自身の結果に執着する傾向がある」
ヒューゴ「……隊長は何故、彼をクライウルブズに?」
アルベロ「俺自身の均衡を保つためだ。戦場における血縁関係は、マイナス要素となることが多々ある……」「互いにそれを乗り越え、兵士に徹することが出来るかどうか」「修練だよ。奴も……俺も未熟なのでな」
ヒューゴ「そんな……隊長程の人が」
アルベロ「買い被るな。現に俺は、ホワイトスターの作戦で失敗を犯している」
ヒューゴ「自分は、あの時の隊長の判断が誤っていたとは思っておりません」「ザパト博士やワン博士からの要請に問題があると……」
アルベロ「そこまでだ、ヒューゴ。俺達の目的は、彼らの真意を探ることではない」
ヒューゴ「……はっ」
〔扉の開閉音〕
カイ「……お久しぶりです、アルベロ・エスト少佐」
アルベロ「カイ……カイ・キタムラか」
カイ「DC戦争の最中にお会いした時以来ですね」
アルベロ「……ああ」(こうやって実際に会うのはな)
ラミア「…………」(クライウルブズ隊隊長、アルベロ・エスト。……彼の立場は“こちら側”でも同じか)
アルベロ「彼女は?」
カイ「自分の部下です」
アルベロ「なら、特殊戦技教導隊のメンバーか」
ラミア「はっ。ラミア・ラヴレス少尉でござんすのよ。……お控えなすって」
アルベロ「む? 今、なんと?」
ラミア(しまった……少佐が普段気にしないので、油断した……!)
カイ「方言ですよ、少佐。……ラミア・ラヴレス。腕は確かです」
アルベロ「すまんな、少し驚いただけだ。俺の部下も紹介しよう」
ヒューゴ「ヒューゴ・メディオ准尉であります」
カイ「では、君が改型3号機のパイロットか」
ヒューゴ「はっ。伝説の旧教導隊メンバーとお会い出来て光栄です、カイ・キタムラ少佐」
カイ「よしてくれ。俺は他の連中ほど濃くはない」
ヒューゴ(……そ、そうかな)
カイ「ともかく、改型の開発プランには俺も関わった。ゲシュペンスト乗りによるゲシュペンスト乗りのための機体に仕上げたつもりだ。巧く使ってやってくれ」
ヒューゴ「了解です」
アルベロ「ところで、カイ少佐。こちらは出来るだけ早くフィッティングを済ませたいと思っている」「慣らしを兼ねて、そちらと軽く模擬戦を行いたいのだが……どうだ?」
カイ「望む所です。早速、準備に取りかかりましょう」
【シナリオデモ終了】

【戦闘マップ1開始】

〔味方ユニット出現〕
ラミア「演習地区へ到達」
カイ「コンディション・グリーン。サーボの回り方がいい感じだし、ソールのグリップも上々」
ラミア「こちらから見る限り、四肢の挙動が、より自然になっているようですが……」
カイ「ああ、可動範囲が広くなったからな」
ラミア「フレームの剛性も向上しちゃっておりましたのですのかね?」
カイ「その分、サーボモーターの負荷が多少気になる所だが……」「少数生産を想定している機体だから、あまり贅沢は言えん。最初から極端なチューンを施すつもりもなかったしな」
ラミア「なるほど……機体性能は、各部ハードポイントへ装着するオプションで出す、と?」
カイ「いずれな。だから、そのためにも他部隊によるケーススタディが必要なのだ」
〔第3軍ユニット出現〕
アルベロ「ふむ……違和感はないな。ノーマルタイプの延長線上で扱える。……そちらはどうだ、ヒューゴ?」
ヒューゴ「思ったより振り回せそうです。それに、量産型ヒュッケバインより重心が低くて安定感がある……」「個人的にはいい機体だと思います」
アルベロ「だが、ヒュッケバインの軽やかさに慣れたパイロットには扱いにくいだろう」「こいつを乗りこなすには腕が必要……エース用の機体だな」
ヒューゴ(エース……か。俺は隊長やカイ少佐のようなパイロットになれるんだろうか)
アルベロ「関節可動範囲を再確認しておけ。相手は教導隊……片方は特機だ」「下手を打てば、折角の新型が工場へ送り返されることになる。……俺達の任務を忘れるなよ」
ヒューゴ「はっ……」(今までのように遠巻きではなく、直接データを取る格好の機会だと言うことか)(だが、相手が相手だ。全力でかからなきゃ、やられちまう)
ラミア(ほう……アルベロ・エストは当然として、部下の男も……悪くない挙動だ)「ヒューゴ・メディオ准尉……いい腕をしているようですね」
カイ「ああ……アルベロ少佐によく仕込まれているようだ」
ラミア「……そのアルベロ少佐ですが」
カイ「何だ?」
ラミア「カイ少佐と、アルベロ少佐……いつから仲良しちゃんになっちゃられましたりしたのですか?」
カイ「彼と知り合ったのは前の教導隊が解散した後だ。モーション・データ構築関連の仕事を何度か共にしたことがある」
ラミア(なるほど、それでか……)
カイ「俺達が作り上げたTC-OSのモーション・データは、どちらかと言えば単体運用や2機連携用のものが多くてな」「無論、部隊運用のデータも作っていたが、その最中で教導隊は解散してしまった」「で、その後をかつてイルムがいたPTXチームや……」「アルベロ少佐のクライウルブズを始めとするいくつかの部隊が受け継ぎ、データをブラッシュアップして行ったのだ」
ラミア「なるほど」
〔通信のコール音〕
アルベロ「む? これは……」
ヒューゴ「どうしたんです、隊長?」
アルベロ「Pモードに切り替えろ」
ヒューゴ「はっ」
〔通信のコール音〕
アルベロ「ヒューゴ、フォリアのチームが敵性攻撃機に襲撃されているとの連絡が入った」
ヒューゴ「!」
アルベロ「護衛していた輸送機が不時着し、苦戦しているようだ」「戦闘地区には飛ばせばギリギリで到達できる。お前はここに残れ」
ヒューゴ「いえ、自分も行きます」
アルベロ「慣らしが完全に終わっていない状態で戦闘を行うのは危険だ」
ヒューゴ「多少の無茶は承知の上です。使いこなしてみせます、この改型を」
アルベロ「……いいだろう」
〔通信のコール音〕
アルベロ「カイ少佐、模擬戦は中止にさせてくれ。こちらに急用が出来た」
カイ「急用?」
アルベロ「俺の部下が敵性攻撃機と戦闘中だ。今から救援に向かう」
カイ「では、自分達も同行しましょう。機体のこともあります。頭数は多い方が良いかと」
アルベロ(……この男に俺達とツェントル・プロジェクトの関係を知られるわけにはいかん)(だが、優先すべきは情報の隠蔽より積み荷の確保か……)「了解した。頼む」
カイ「はっ」
【戦闘マップ1終了】


サブタイトル
「狼達との邂逅」


【戦闘マップ開始】
〔味方ユニット出現済み〕
〔敵ユニット出現済み〕
〔第3軍ユニット出現済み〕

フォリア(チッ、フォーメーションを分散させたのが裏目に出たか……!)(2番機と3番機は何とか逃がせたが、こっちにあれだけの戦力を差し向けてくるとは……)
〔カーソル、ランドリオンを指定〕
フォリア(やはり、あの連中は1番機の積み荷が何なのか知っているとしか……)
〔通信のコール音〕
フォリア「! これは!?」
〔味方ユニット出現〕
アルベロ「ウルフ9、無事か?」
フォリア「隊長!」
アルベロ「俺達で敵を引きつける。お前は輸送機の防衛に専念しろ」
フォリア「専念……!?」
アルベロ「命令を復唱しろ、ウルフ9」
フォリア「了解……! ウルフ9、輸送機を防衛します」
アルベロ「……ウルフ8、お前はウルフ9のカバーを」
ヒューゴ「了解。……フォリア、そっちに行くまで保たせろよ」
フォリア「……ああ」(親父の奴、ヒューゴには新型を与えて……)
ヒューゴ「フォリア……」
フォリア「何でもない。それより、大物を連れてきてるじゃないか」
ヒューゴ「特殊戦技教導隊だ。成り行きで手伝ってもらうことになってな」
フォリア(今回は正々堂々と観戦できるってことか)(だが、これで益々おいしい所を持っていかれるわけにはいかなくなったぜ)
ラミア「敵機はノイエDCの残党と見て、間違いないようですね」
カイ「だが、今の彼らにこんな所へあれだけの戦力を投入する余裕があるとは思えん」
ラミア「別の後ろ盾がいると?」
カイ「そう考えるのが妥当だな」(ドナが言っていた新しいパトロンか、それとも……)
ラミア「どうあれ、輸送機の積み荷……余程のお宝ちゃんがザックザクのようでございましちゃうのでしょう」
カイ「ああ。DC残党にとっての宝、となると……」
アルベロ「ウルフ1よりゴースト1へ。フォワードは俺が務める。援護を頼むぞ」
カイ「了解」
<戦闘開始>

<フォリアが移動>

ヒューゴ「フォリア! 輸送機から離れるな!」
フォリア「臨機応変な対応って奴だよ! フォローを頼むぜ!」
ヒューゴ「フォリア!」
フォリア(すまんな、ヒューゴ。親父への示しってもんがあるんでな)
アルベロ「……」

<カイが戦闘>
カイ「モーション・データのトランスプラントは完璧……反応も上々」「オルレアンの連中は、いい仕事をしてくれた!」

<ラミアが戦闘>
ラミア(ノイエDC、か。シャドウミラー隊は消えたというのに、こいつらはまだ消えん)(……いや、シャドウミラーはまだ私がいる。これも……因果か)

<アルベロが戦闘>
アルベロ(輸送機が襲撃されるとはな……。情報が軍外部に漏れているのか?)(だとしたら、誰の仕業だ?)

<ヒューゴが戦闘>
ヒューゴ「実戦で慣らしをやる羽目になるとはな……!」「だが、自分で言い出したことだ。やってみせる!」

<敵全滅・勝利条件達成>
ラミア「敵機、全機撃墜。エリア・クリア」
カイ「輸送機は……何とか無事のようだな」
アルベロ「支援を感謝する。後は我々に任せて、そちらは帰投せよ」
カイ「……アルベロ少佐、輸送機には何が積まれているのです?」
アルベロ「我々は輸送命令を受けただけだ。中身のことは知らん」
カイ「では、輸送機はどこから?」
アルベロ「機密事項だ。教えられん」
ラミア「……」
カイ「……」「……了解。ラミア、こちらの保持は出来るか?」
ラミア「はい。……ですが、よろしいので?」
カイ「帰投するぞ」
ラミア「……了解」
〔ラミア、カイへ隣接〕
〔カイ&ラミア、マップ端へ移動〕
〔味方ユニット離脱〕

アルベロ「……」
ヒューゴ「フォリア、大丈夫か?」
フォリア「ああ……」
ヒューゴ「教えてくれ、アースクレイドルから何を運んできたんだ?」
フォリア「そいつは俺も知らない。ミタールの部下から、コンテナを積んだ輸送機を守れと言われただけなんでな」
ヒューゴ「……」
フォリア「またロクでもない物だろうぜ。ノイエDCの残党に狙われるぐらいだからな」
ヒューゴ(隊長はコンテナの中身を知っているんだろうか……?)
※※フォリアが移動の場合、セリフ追加※※
アルベロ「……ウルフ9。何故、俺の命令に逆らった?」
フォリア「……!」
アルベロ「俺は輸送機の護衛に専念しろと言ったはずだ。どうして輸送機から離れた?」
フォリア「臨機応変な状況判断を行った結果であります」
アルベロ「手柄を焦ったのではないか?」
フォリア「……いえ」
アルベロ「次に同じような行動を取った場合、お前を任務から外す。いいな?」
フォリア「……了解です、隊長」
【戦闘マップ2開始】

【シナリオエンドデモ】

地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地

アビアノ基地 食堂
ラミア「カイ少佐、あと2時間で伊豆からの迎えが到着します」
カイ「ああ。アンジュルグとゲシュペンストの搬入準備は完了している」「輸送機が来るまで、一息入れるか」
ラミア「はいな~」
カイ「ところで……クライウルブズの行き先はわかったか?」
ラミア「ゴホン……。いえ、アビアノに連絡は入っていないようです」
カイ「彼らの現時点での駐屯地は?」
ラミア「それも不明です。クライウルブズのミッションについては、ダブルAクラスの機密扱いとなっています」
カイ「特殊作戦PT部隊という性質上、当然の処置だろうが……妙に引っ掛かるな」
ラミア「シャドウミラー隊……と言っても、これは“向こう側”での話ですが、連邦軍内でその立場を利用、暗躍を続けました」「そして……最終的には叛乱を」
カイ「アルベロ少佐の性格から判断すれば、クライウルブズがシャドウミラーと同じ道を歩むとは思えん」
ラミア(そう……“向こう側”のクライウルブズは、シャドウミラーの敵となった)(彼らは政治的思想を持った部隊ではなかった。それは“こちら側”でも変わらんだろう……)
カイ「……それに、輸送機を襲った連中のことも気になる」
ラミア「もう少し踏み込んだ調査をしてみますか? もしかしたら……」
カイ「いや、今はいい。ダブルAの機密へ下手に噛みつけば、大火傷を負いかねん」「それに、次期主力機トライアルのこともある。あれには我々も無関係ではいられんしな」
ラミア「また、ここへ戻ってくることになりそうですね」
カイ「だろうな。仕事は山積みだ」
ラミア「負荷の少ない通常モードで遂行できます。私は別にかまいませんが」
カイ「とは言え、お前には仕事をさせ過ぎてしまっている。たまには休みをやらんとな」
ラミア「いえ、人造人間であるWシリーズの必要睡眠時間は、少佐ちゃん達と比べて遥かに少ないっちゃあ少なかったりしちゃうのですのよ?」
カイ「無理をするな。ほら、ろれつが回ってないだろうが」
ラミア「……普段はスルーしてるんだから、こういう時もそうしやがり下さい」
〔走る足音〕
アクア「あ、あのっ、失礼しますです! 特殊戦技教導隊のカイ・キタムラ少佐でいらっしゃられますでしょうか!?」
カイ「ん? な、何だ?」
ラミア「ろれつが回っていない、とはこういうことです、少佐」
アクア「あ、わ、私ったら、何を!?」
カイ「君は?」
アクア「は、はい! PTパイロット候補生のアクア・ケントルムです!」
カイ「ほう」
アクア「少佐にお会いできて、大変光栄です。それで、あの……もし、よろしければ……」
カイ「?」
アクア「サ、サインをいただけませんでしょうかっ!?」
カイ「サ、サイン……? う~む、柄じゃないんだが……」
アクア「ぜ、是非お願いしますっ! 少佐や教導隊の方々は、私達候補生の憧れなんです!」
カイ「……わかった、わかったよ。で、何に書けばいいんだ?」
アクア「え? あっ! ええっと……」(い、いけない! こんな所で会えると思ってなかったから……)
ラミア「そうだな……このメモパッドで良ければ、提供するが?」
アクア「は、はい。ありがとうございます……」(わ……凄く綺麗な人……。お人形さんみたい……)「あの、あなたも教導隊の……いえ、もしかして、カイ少佐の奥様……?」
カイ「ぶっ! お、おい! 何でそういう発想になるんだ!」
ラミア「残念ながら、私はただの部下にすぎん。教導隊所属、ラミア・ラヴレス少尉だ」
アクア(教導隊のウェーブって、変わってるのね。あんなセクシー全開の服を普通に着てるし……私じゃ絶対に耐えられないわ……)「で、出来ましたら、少尉のサインもいただければ……」
ラミア「了解した。……………………よし、これでいいか?」
アクア「は、はい! ……うわっ、でか!」
ラミア「では、少佐……」
カイ「ふう。まさか、こんな若い娘にサインを……っと、でかいな! お前のサイン」「書く所がないぞ。……しょうがない、ではこの辺りに……カ・イ・キ・タ・ム・ラ、と」
アクア「あ、ありがとうございます! 一生の宝物にしますっ!」
カイ「訓練をきちんとこなして、いいパイロットになれよ」
アクア「はい! では、失礼します!」
〔走る足音〕
カイ「やれやれ。元気なことだ」
ラミア「……新兵、か。私達Wシリーズにはない概念です。ですが、見ていて不思議と悪い感じはしない……」
カイ「フッ、母性本能をくすぐられた……というところか。子を見守る母親のような顔だな、ラミア」
ラミア(母親……? 私が……?)
カイ「さて……今の内に土産物を買いに行くか」
〔アナウンスチャイム〕
アナウンス「特殊戦技教導隊、カイ・キタムラ少佐。レベル4、マウロ・ガット准将の執務室まで出頭して下さい。繰り返します……」
カイ「……ふう。これで時間がなくなりそうだな」

アビアノ基地内
マウロ「……ラミア・ラヴレス少尉、ラトゥーニ・スゥボータ少尉、アラド・バランガ曹長、ゼオラ・シュバイツァー曹長、以上4名を……」「このアビアノで開催される次期主力機トライアルに参加させろ」
カイ「はっ。彼らにはトライアル機の評価試験を?」
マウロ「任務内容、及び開催期日等については追って通達する」
カイ「了解です」
マウロ「……資料を見たところ、彼らはまだ若い。と言うか、内3名は子供だ」「アビリティ・データを信じぬわけではないが……大丈夫なのだろうな?」
カイ「彼らはインスペクターやシャドウミラー、アインストとの激戦を生き抜いた猛者です。故に教導隊へ配属させました」
マウロ「とは言え、旧教導隊のメンバーと比べると……どうも、な」
カイ「見た目の迫力に欠けるのは、致し方ありませんな」
マウロ「そういう意味で言ったわけではない」
カイ(体裁を気にしていることに違いはないだろうが)「准将……自分は、彼らの将来性を見込んで選抜したつもりです」
マウロ「まあいい。今回の次期主力機トライアルは、イージス計画の中でも重要な位置を占める。部下にそのことをよく言い聞かせておけ」
カイ「はっ。……ところで、自分はトライアルに参加しなくてよろしいのですか?」
マウロ「ああ。これ以上、ケネスに借りを作りたくないのでな」
カイ(あのタコ親父と知り合いか……)
マウロ「他に質問は?」
カイ「一つあります。ツェントル・プロジェクトの機体はトライアルに参加するのですか?」
マウロ「ツェントル・プロジェクト……? 名前は聞いておるが、詳細は知らん。少なくとも、そこから提出される機体はない」
カイ「了解です」(ドナのウェンディゴは試作段階の物だった……)(ツェントル・プロジェクトの機体は、公の場へ出すまでには至っていないということか……)

イタリア地区 ブレッシア

トーチカ1
エリック「ほう、アースクレイドルからのう」
ミタール「根気よく捜索を続けていた甲斐があった」
エリック「じゃが、あれから随分時間が経っておるでの。再生できるのかの」
ミタール「ラズムナニウムを使う。適合するかどうかはやってみなければわからんが……」「極端な拒絶反応が出た場合は一時凍結して、あの男の目覚めを待つ」
エリック「もう1人の眠り王子……いや、眠りトカゲじゃの。こっちの言うことを聞くかの」
ミタール「腹の探り合いは以前にもやっていたのでな。利用できる所までは利用する」
エリック「やれやれ、扱いの難しい客人が多いの。この……“ヘッド”を含めて」
???「……………………」
ミタール「だが……制御できれば、これは強力無比な生体兵器となる」
エリック「失敗すれば、ただでは済まんがの」
ミタール「こいつの細胞を組み込んだフラットフィッシュでテストを行う」
エリック「んむぅ……あまり良くないと思うがの、アインストを兵器として利用するのは」「ラズムナニウムを打ち込んだせいか、見た目が変わってきておるし……」「人の言うことを聞かなさそうな顔をしておるしの」
ミタール「……顔で判断するな、顔で」
エリック「何にせよ、ワシはこの手のモノは好かんの」
ミタール「受け入れてもらうぞ、ワン博士。場合によっては、我らの本命になるかも知れんのだ……」
ミタール「このアインスト…… いや、“イェッツト”がな」
???「……………………」
〔水槽の泡音〕

地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地

伊豆基地 内部
〔扉の開閉音〕
カイ「……戻ったぞ」
ゼオラ「お帰りなさい、カイ少佐。それにラミア少尉」
ラミア「ああ。そちらは変わりなかったか?」
ラトゥーニ「はい、特に問題はありません」
アラド「どうでした、出張は? なんか美味いものとか食べたッスか?」
カイ「どちらかと言うと飲んでた方が多かったが……まあ、多少はな」
アラド「行った先はトルコのインジリスクですよね。つーことは、本場のトルコライスを?」
カイ「あれの発祥地はな、トルコじゃない。日本の長崎だ」
アラド「え? そうだったんスか」
ゼオラ「アラド、トルコライスって何なの?」
アラド「ピラフとスパゲッティの上へトンカツを乗せて、さらにその上からドミグラスソースをかけた奴」
ゼオラ「カ、カロリー高そう……」
ラトゥーニ「いかにもアラドが好きそうな料理ね」
アラド「そういうのもたべとかないと、おっきくなれないぞー」
ラーダ「……少佐、奥様や娘さんのお土産は?」
カイ「結局、買いに行く時間がなかった」
ラーダ「そうだろうと思って、私の方で取り寄せておきましたわ」
カイ「重ね重ねすまん。それから、出張中にたまっていた電子文書を俺の端末に送っておいてくれ」
ラーダ「もう用意してありますが……今日中に処理されますか?」
カイ「ああ。それと……アラド、ゼオラ、ラトゥーニ」「お前達にはラミアと一緒にアビアノで行われる次期主力機トライアルへ参加してもらうことになった」
ラトゥーニ「はい」
アラド「アビアノと言ったら、イタリア。イタリアと言ったら、パスタ、ピザ、リゾット。楽しみ~!」
ゼオラ「アラド、遊びに行くんじゃないんだから」
カイ「しばらくは忙しくなるだろう。お前達には明日から2日間、休みをやる」
アラド「え!? ホントですか!?」
カイ「ああ。査問や転属手続きのせいで、満足に休ませてやれなかったからな」「それに今週のメニューはシミュレーター訓練だから、俺の方で融通が利く」「これからに備えて、英気を養っておけ。ラミア……向こうでも言ったが、お前もだ」
ラミア「ですが、2日も……」
アラド「いいじゃないッスか、少尉。ゆっくり羽を伸ばしましょうよ」
ラミア「そう言われても……休暇に何をやっていいかよくわからん」「2日…………睡眠時間を2時間ずつ取るとして、44時間か。いや、現時点から考えれば……」
アラド「うむむ……少尉らしいっていうか、何て言うか」
ラーダ「じゃあ、ラミア……こうしない? 1日は休んで、アラド達とどこかへ行ってらっしゃい」「もう一日はメンテをやりましょう。忙しくなるんだったら、今の内にね」
ラミア「……了解」
ゼオラ「ラミア少尉、どこか行きたい所とかありますか?」
ラミア「……別にないが」
アラド「ん~、おれは……海に行きてえなあ」
ラトゥーニ「浅草にいるジャーダとガーネットに会いたい……」
ゼオラ「海……か。何となく不純な動機が見え隠れするけど……いいかもね」「じゃあ、1日目は海。2日目は浅草。これでどう?」
アラド「異議なし!」
ラトゥーニ「私も」
ラミア「……異論はない」
アラド(やった! ゼオラはともかく、ラミア少尉の水着! ドすげえモンがおがめそうだぜ~~?)

伊豆 下田海岸
ラトゥーニ「……アラド、ジャーダから返事が来たわ。明日の件、OKだって」
アラド「そっか、よかった。……ところでラト、ラミア少尉とゼオラは?」
ラトゥーニ「もうすぐ来ると思うけど……」
ゼオラ「おまたせ!」
ラミア「……装備が変わると、落ち着かんな」
アラド「予想通りとはいえ……スゲー……」
ラトゥーニ「……大きい……」
ラミア「あ、あまりジロジロ見ないでくれ」
アラド「すごいド派手な水着ッスね~」
ラミア「うむ、以前エクセ姉様からいただいた。少々キツいが……悪くない感じだ」
ゼオラ「……ね、ねえ、アラド。わ、私の水着、どう? ラーダさんに買ってもらったの」
アラド「うむむむ……」
ゼオラ「………」
アラド「こっちもこっちでツインボムって感じ……」
ゼオラ「えっ……?」
アラド「あ、いやいや。似合ってるよ」
ゼオラ「良かった……」
アラド(う~ん、何にしても新鮮だねぇ)
ゼオラ「じゃ、早く海に入りましょ!」
アラド「まあ待てよ、ゼオラ。この日差しだぜ? オイルくらい塗らせろって」
ゼオラ「そんなこと言って……いつまでも少尉を見てるんじゃないわよ? 行きましょ、ラト」
ラトゥーニ「あ……待って、ゼオラ」
アラド「あ、ラト。行く前にサンオイルを貸してちょんまげ」
ラトゥーニ「え? いいけど……」
ラミア「……ふむ、海に来て着替えてはみたが……やはり何をしたらいいのかわからんな」(ゼオラは楽しそうに走り回っている……。これも心身のケアと考えれば、悪いことではないか)
アラド「あの~ ラミア少尉?」
ラミア「む? どうした、行かないのか?」
アラド「いやあ、まずは紫外線対策をしないと! それを少尉に手伝っていただけたらな~……と」
ラミア「別に構わんが……どうしたらいいのだ? 私にそのあたりの知識はないが?」
アラド「そんなに難しくないッス! 紫外線を遮断するサンオイルを塗るんスけど、塗り方に……ちょっとコツがあって」
ラトゥーニ「まさか……」
ラミア「ほう。どうすればいいのだ?」
アラド「え~、まずオイルを水着の前面にたらすッス」
ラミア「……こ、これでいいのか?」
アラド「ええ。たっぷりしみ込ませたら、塗りつける相手の背中に……押し付けるッス。スキンシップッス」
ラミア「了解した。海で休暇を取るというのは、面倒なものだな。では……」
〔走る足音〕
ゼオラ「くぉらーーーーッ!! あんた、ラミア少尉に何をやらせてんのよっ!!」
アラド「あ、いや、これは……」
ゼオラ「いいから、こっちに来なさいっ! 塩漬けにしてあげるわ!」
アラド「いや、その、誤解だってば!」
ラトゥーニ「引きずられていった……」
ラミア「……わけがわからんな。だいたい、このオイルはどうするのだ? 私には必要のないものなのだが……」
ラトゥーニ「……」
ラミア「……」
ラミア「……ラトゥーニ」
ラトゥーニ「はい?」
ラミア「当然、お前にもオイルが必要だろう? 大丈夫だ。私に……任せろ」
ラトゥーニ「え? しょ、少尉……? あの、押しつけないで……」
【シナリオエンドデモ終了】


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