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No.34
回瀾を既倒に反す

【シナリオデモ開始】
イブン「ミオに続いて、今度はマサキか…しかも、テュッティとヤンロンが意識不明とは……魔装機神操者に災難が続くのう」
ウェンディ「それで、ヤンロンとテュッティの容態はどうですか?」
イブン「プラーナは正常値に戻っておるが、いきなりのポゼッションじゃからの。命に別状はありゃせんが、しばらくは安静じゃ。それよりも問題はマサキの方よ」
マサキ「…………」
イブン「サイバスターに拒否された、か。こいつは重症よな」
リューネ「イブンお婆さん、何とかならないの?」
イブン「わしにできる事はただ一つよ。精霊界に赴かせる、それしかあるまい」
ウェンディ「でも……マサキはサイバスターから……」
イブン「精霊界は無意識の領域じゃ。サイバスターがダメならジャオームに乗っている事をイメージせい。ジャオームなら、お主を拒否したりせんじゃろう」
リューネ「え? でもジャオームは今、ゲンナジーが使ってるのに」
イブン「忘れたか? 精霊界は実体ではない。お主も自分自身と戦ったろうが」
リューネ「あ、そうだっけ。でも、だったらマサキもサイバスターに乗れるんじゃないの?」
イブン「拒否された経験がある以上、心の中でもそれはできんよ」
マサキ「けどよ……何で俺がサイバスターから拒否されたんだ?」
イブン「そいつはお主の心の問題じゃ。わしらがとやかく言ったところで、何の解決にもならん」
マサキ「俺の……心……」
イブン「言葉で理解するのではなく、体感しろ、という事じゃ」
リューネ「うーんとね……こう言っちゃ何だけど……今のマサキって、理屈っぽいのよ」
マサキ「いや、けど、それは……色々考える事があったからよ……」
ウェンディ「ショックを受ける事が多かったのはわかるけど……少し考え方が窮屈になってる気がするの」
マサキ「昔は何も知らなかっただけだ。今は違う。自分の責任の重さは嫌ってほどわかってる。だからこそ、ちゃんと考えて……」
イブン「これこれ、今そんな話をしても始まらん。まずは精霊界に赴く事じゃ。全てはそれからよ」
マサキ「……わかったよ」
イブン「リューネ、ウェンディ、お主達も準備せい」
リューネ「え? 準備って?」
イブン「これはわしの勘じゃがな……お主達二人の力添えが、マサキには必要だと思うんじゃよ」
ウェンディ「え? でも、精霊界はマサキの心にも通じてるんですよね? 人の心の中に立ち入るのは、よくないのでは……」
イブン「何、無意識とはいえ、入り込むのは表層的な部分だけよ。見られたくない部分まで見せたりはせん」
リューネ「そう言われても……マサキはいいの?」
マサキ「……今の俺は、すがれるもんなら何にだってすがりたい気分だよ」
イブン「ならば問題ないな?」
マサキ「ああ、かまわねぇ」
イブン「よし、では二人共準備せよ」
リューネ「え、えーと……何すればいいの?」
ウェンディ「ここの水晶球に手を置いて。そうすればリンクできるから」
リューネ「そんな簡単にできるの?」
イブン「お主達は以前、精霊界で修業したからの。あの時の登録がまだ生きておるのよ」
リューネ「あ、そうなんだ」
【シナリオデモ終了】


サブタイトル
「回瀾を既倒に反す」


【戦闘マップ開始】
〔味方ユニット出現〕
マサキ「ジャオームか……確かに、こいつなら俺を拒まねぇが……」
イブン「聞こえるか、マサキよ」
マサキ「ああ、聞こえてるぜ」
ウェンディ「良かった、ジャオームには乗れるのね」
マサキ「ウェンディか……ああ、何とかな」
リューネ「何だ、あたしたちが修業した時とあんま変わんないね」
イブン「今回は、相手が違うわい。マサキ、準備はよいな?」
マサキ「あ、ああ。けど、相手が違うって……」
〔敵ユニット出現〕
マサキ「ディアブロ!? プレシアを相手にしろってのか!?」
マドック「何を言っとるか。わしを忘れたのか、マサキ」
マサキ「な……マドック爺さん!?」
リューネ「え? 誰?」
ウェンディ「ディアブロの前の操者よ。春秋戦争で亡くなった……」
イブン「久しぶりじゃの、マドック」
マドック「おお、イブン婆さん。元気そうで何より」
イブン「お主もな……というのも変じゃな。まあ、変わりなさそうで何よりよ」
マドック「死んだ者にする挨拶ではないのう。ひゃっひゃっひゃっ」
マサキ「どういう事だ!? 何でマドック爺さんが……」
イブン「やれやれ、ミオとまったく同じ反応をするわい。ミオから話を聞いとらんかったのか?」
マサキ「い、いや……初耳だ」
イブン「そこのマドックは、精霊と同じ。わしらの思い出みたいなもんよ」
マサキ「思い出……死んだ人間が実体化すんのか?」
イブン「生き返るワケではないぞ。生前の記憶やわしらの思い出を再構築しただけじゃ」
マサキ「本人とは違うって事か?」
イブン「ああ、生きているわしらと違って成長もせんし変化もせん」
マドック「長話はそれくらいにして、わしの相手をしてもらおうかの、マサキよ」
マサキ「相手って……戦えってのか?」
マドック「当たり前じゃ。そのためにわしがここにおる」
マサキ「け、けど、理由もねぇのに戦えるかよ!」
マドック「理由ならあるわい。お前さんが忘れたものを取り戻すためよ。充分じゃろうが」
マサキ「俺が……忘れたもの?」
マドック「では、いくぞい!」
〔マサキ、マドックへ接近〕
<戦闘開始>

<マサキvsマドック>

マドック「そういえば、お前さんには話しとらんかったな。わしの過去を」
マサキ「過去? そんなもん興味ねぇよ!」
マドック「まあ、聞け。わしはな、昔テロ組織に入っておった」
マサキ「なっ……!? 爺さん、テロリストだったのか!?」
マドック「若気の至りよ。その頃はそれが正しいと思い込んどった」
マサキ「俺は……テロリストは赦さねぇ!」
マドック「その気持ちは大事じゃよ。わしは取り返しのつかん事になってからそれに気付いたからな」
マサキ「……理由は聞かねぇ。爺さんは、それでテロリストをやめたんだな?」
マドック「ああ。それどころか逆に取り締まる側にいた事もあったわい。まあ、魔装機操者も似た様な仕事ではあるがの。ともかく、今のお前さんはあの頃のわしとどこか似ておる」
マサキ「俺が……テロリストだってのか!? バカ言え! 俺が戦わないで済む方法を色々考えてんだぞ!」
マドック「やれやれ……やはり言葉では、なかなか伝わらんな。いいからかかってこい、マサキ!」
マサキ「くっ……わ、わかったよ」

<マドック撃破・敵増援1出現>
マドック「ほう……腕を上げおったな、マサキ」
マサキ「爺さんこそ。思ってた以上にやるじゃねぇか」
マドック「じゃが、まだまだ本調子ではない様じゃな。わしの力ではここまでが限界か……」
マサキ「お、おい、爺さん!?」
マドック「心配など要らんわい。わしは元いた場所に戻るだけよ」
マサキ「爺さん……」
マドック「お前さんが初めてラ・ギアスに来た時の事、思い出すんじゃ。何に怒り、何を護ろうとしたのか……」
マサキ「最初の……怒り……」
マドック「……ここまでじゃな。また会う事があるかもしれんが……達者でな」
〔敵ユニット離脱〕
マサキ「爺さん! 俺は……俺はただ……テロリストが赦せなくて……それで……それで戦った……」
イブン「ふむ……マドック、ようやってくれた。どうやら、サイバスターはマサキに共感し始めたぞ」
マサキ「えっ!?」
イブン「喚んでみよ、サイバスターを」
マサキ「……サイバスター。俺の声が聞こえるか……」
ウェンディ「…………」
リューネ「…………」
マサキ「サイバスター……来いっ! サイバスター!!」
〔マサキに光の柱〕
〔味方ユニット変化〕

マサキ「あ……」
リューネ「やった!!」
ウェンディ「サイバスターが……戻った!」
マサキ「サイバスター……」
イブン「喜ぶのは早いわい。今のお主は、選ばれたばかりのヒヨッコよ。以前のような力は、まだ発揮できん。わかるじゃろう?」
マサキ「あ、ああ……なんかまだ、しっくり来てねぇ……」
イブン「うむ。では、次の試練じゃ」
マサキ「まだあるのか?」
イブン「お主とサイバスターの精霊、サイフィスが同調するまで、試練は続くわい」
マサキ「……わかった。続けてくれ」
イブン「よし、続けよう」
〔敵ユニット出現〕
マサキ「ディンフォース!? 今度はティアンのおっさんか!?」
ティアン「やれやれ、涅槃でゆっくりできると思っておったのに……業が深いのう」
マサキ「何で……仲間と戦わなきゃならねぇんだよ!?」
ティアン「むっ? お主……なにやらよからぬものに憑かれておるな?」
マサキ「な、何だと?」
ティアン「ふむ、魔境に堕ちたか。どうやら拙僧が善導してやらねばならん様だな」
マサキ「お、おい」
ティアン「さあ、ゆくぞ! 拳をもって、心ゆくまで語り明かそうではないか!」
マサキ「相変わらず滅茶苦茶だな……まあいい、相手になるぜ!!」
〔マサキ、ティアンへ接近〕

<マサキvsティアン>
ティアン「ほれほれ、どうした! 踏み込みが浅いぞ! 遠慮するな!」
マサキ「くっ……死んだくせに元気じゃねぇか、おっさん!」
ティアン「おう、何の因果か、六道輪廻の輪に舞い戻って来たわい! いや、待てよ。万物これ皆仏性在りとするならば、拙僧もまた、仏の一部やもしれぬ」
マサキ「何ブツブツ言ってんだよ?」
ティアン「むっ? おい、拙僧の悟りの邪魔をするな!」
マサキ「はぁ? 何言ってんだよ? 戦闘中だろうが。大体おっさん、もう悟ってたんじゃねぇのか?」
ティアン「ぬっ……い、いや、悟りにも漸悟と頓悟があってだな……」
マサキ「相変わらず生臭だな」
ティアン「ええい、うるさい! お主も仏教徒にしてやろうか!」
マサキ「蝋人形みたいに言うなっての! 大体ウチの実家は元々仏教だ!」

<ティアン撃破・敵増援2出現>
ティアン「うむ、見事なり。どうじゃ、何か得る所はあったか?」
マサキ「そう言われても……なぁ」
ティアン「だが、拙僧がみ所、少しばかり兆しが見えた気がするぞ」
マサキ「ホントか!?」
ティアン「うむ。気がするだけじゃが」
マサキ「……当てになんねぇ」
ティアン「ともかく、拙僧にできる事は全て尽くした。後はお主の心次第よ」
マサキ「丸投げかよ!」
ティアン「ではまた、いずれ会おうぞ。迷える子羊よ」
〔敵ユニット離脱〕
マサキ「てか、もうすでに仏教ですらねぇじゃねぇかよ」
イブン「ふむ……」
マサキ「イブン婆さんよ、今の、効果あったのか?」
イブン「有ったとの言えるし、無かったとも言えよう」
マサキ「おいおい、婆さんまで感化されてやがる」
リューネ「マサキ、大丈夫?」
マサキ「あ、ああ。なんとかな」
リューネ「でも……」
〔マサキ、回復〕
マサキ「おっ? なんだこりゃ? 回復したのか?」
イブン「ほう、リューネ。お主の言葉、効いた様じゃぞ」
リューネ「えっ? そうなの?」
マサキ「よくわからねぇけど……サンキュ、リューネ」
イブン「さて、では次にいくぞ」
マサキ「ああ、いつでもいいぜ」
〔敵ユニット出現〕
マサキ「ギオラスト……だと? ギオラストで死んだ操者っていやあ……まさか……」
ゼオルート「ええ、そのまさかですよ」
マサキ「ゼオルートのおっさん!? 何でおっさんまで……」
ゼオルート「「うーん、まだわかりませんか? 困りましたねぇ……」
マサキ「何がわかるってんだ!?」
ゼオルート「思い出してください。私が死んだ時の事を」
マサキ「あ……あれは……シュウのヤツが……」
ゼオルート「なぜ私が、無謀とわかっている戦いに赴いたか……わかりませんか?」
マサキ「…………」
ゼオルート「もう少し、の様ですね。あなたにはまだ伝えたい事もあります。戦いの中で、何かを掴んでください」
マサキ「……わかった。いくぜ!」
〔マサキ、ゼオルートへ接近〕

<マサキvsゼオルート>
ゼオルート「どうやら腕は上達した様ですね」
マサキ「そ、そうか?」
ゼオルート「ええ。ですが、太刀筋に迷いがあります」
マサキ「!?」
ゼオルート「戦いを忌避しても、戦いはあなたを追いかけてきますよ」
マサキ「それは……わかってる」
ゼオルート「ならば、立ち向かいなさい。あなたにはその力があるんです」
マサキ「け、けど……くそっ!!」

<ゼオルート撃破・敵増援3出現>
ゼオルート「いやあ、これは師匠形無しですね。参りました」
マサキ「いや……これはサイバスターの力だ。俺の力じゃ……」
ゼオルート「では逆に訊きましょう。その力を振るったのは、あなたの意志ですか? それともサイバスターの?」
マサキ「そ……それは……俺の意志でもあり、サイバスターの意志……でもある」
ゼオルート「それがわかれば上出来です」
マサキ「け、けどよ……いくら精霊の意志でも……戦って、戦って……憎しみだけが再生産されて……平和にならねぇ……」
ゼオルート「……なるほど、これは私の手には余りますねぇ」
マサキ「えっ? お、おっさん!?」
ゼオルート「とりあえず、道は示しました。後は次の方にお任せしましょう」
マサキ「おっさん……行っちまうのか?」
ゼオルート「ええ、私の役目はここまでです。プレシアの事、くれぐれもよろしく頼みましたよ」
マサキ「ああ……わかってる」
〔敵ユニット離脱〕
〔敵ユニット出現〕

マサキ「デュラクシール……そうかよ、今度はフェイル殿下か」
フェイル「そうだ、私だよ」
マサキ「もう一度……俺にやれってのか!」
フェイル「君がなくしたものを取り戻すためなら、私は喜んで相手になるよ」
マサキ「殿下……」
フェイル「それが、今の私にできる唯一の償いだからな」
マサキ「償いなんて……そんな事言わないでくれ! 殿下は……最期まで立派だっただからよ」
フェイル「ありがとう、マサキ。では、感謝を込めて……君の迷いを消し去ってあげよう。それでいいな?」
マサキ「……わかった。いくぜっ!!」
〔マサキ、フェイルへ接近〕

<マサキvsフェイル>
マサキ「殿下……殿下は平和のために戦ったんだよな?」
フェイル「ああ、そうだ……いや、そのつもりだった。君が、私の過ちを糺してくれたんだよ、マサキ」
マサキ「あ……」
フェイル「平和とは、尊いものだ。だが、それは誰かに与えられるものじゃない。常に、護り抜くものなんだ、と」
マサキ「殿下……」
フェイル「急ぎすぎた私に、君は迷いなくぶつかってきてくれた。それは、戦わねば得られなかったものだ」
マサキ「戦わねば……得られなかった……もの?」
フェイル「平和にも、隷従の平和があるように、戦争にも、解放の戦争、防衛の戦争がある。全てをひとくくりでは語れない。戦いで失うものは計り知れない。だが、戦わねば得られない、護れないものも少なからずある」
マサキ「それは……わかってるつもりだが……」
フェイル「では掴め、思い出せ! 私との戦いで得たもの、失ったものを!」
マサキ「くっ!!」

<フェイル撃破・勝利条件達成>
フェイル「……わかるか、マサキ」
マサキ「俺は……また殿下を失うのか?」
フェイル「いや……私が遺したものは、君が立派に受け継いでくれている。失ってなど……いない」
マサキ「受け継いでいる……俺が?」
フェイル「精霊の心だよ。魔装機神に込められた精霊の意志……それが、君に託されたものだ。何者にも屈しない、独立した意志。あらゆる脅威と戦いうる力。その全てが魔装機神にある」
マサキ「ああ……そうだった。魔装機神は……戦い、護るために生み出されたんだ……殿下はそれを、俺に教えてくれた……」
フェイル「平和とは、相手の言うなりになれば訪れるものじゃない。それはただの隷属で、かりそめの平和に過ぎない」
マサキ「けど……生まれていく憎しみは……消す事ができねぇ……」
フェイル「では問おう。君は、私が憎くて戦ったのか?」
マサキ「んなワケねぇだろうが! 戦わなきゃならねぇから……だから俺は……」
フェイル「そうだ。憎くなくても戦わねばならない時がある。同じ様に、たとえ憎まれても戦わねばならない時もある」
マサキ「あ……」
フェイル「誰だって、憎まれるのは嫌なものだ。だが……」
マサキ「そうだな……そんなもの、言い訳にしちゃいけねぇ。やるべき事をやる……その方が大事だ」
フェイル「ああ、そうだ……それでこそ、私を止めてくれたマサキだよ」
マサキ「殿下……さよならは言わねぇ。また……会えるんだろう?」
フェイル「さあな……君がまた迷う様な事があれば、会えるかもしれないが」
マサキ「ああ、だったら会えない方がいいのかな?」
フェイル「迷わない人生など無いからな。特に君は方向音痴だし」
マサキ「はは、うまい事いうじゃん」
フェイル「ふ……ははは。では、いずれな」
マサキ「ああ……殿下」
〔敵ユニット離脱〕
マサキ「……殿下と笑って別れられるとはな」
〔マサキ、後退]
〔マサキの前の地点に光〕

マサキ「!? なんだ? まだあるのか……?」
????(サイフィス)「……マサキ」
マサキ「? 誰だよ?」
????(サイフィス)「ああ……ようやく私の声が聞こえる様になったんですね、マサキ」
マサキ「だから、誰だっての」
[イベント「風の精霊サイフィス」]
サイフィス(画面オフ)「私はサイフィス。魔装機神サイバスターを守護する精霊です」
マサキ「なっ!? サイフィスって……喋れたのか? ああ、いや、待て。そういや、ポゼッションの時に声を聞いた様な……いや、けど、あの時はこんなにはっきりした声じゃないしそれに……」
サイフィス(画面オフ)「どうかしましたか?」
マサキ「サイフィスって、女だったのか」
サイフィス(画面オフ)「精霊に性別はありませんが……外見は祀られている像を元に再現されています」
マサキ「ああ、くそっ! どうでもいいな、そんな事は。それよりなんだ、その……」
サイフィス(画面オフ)「はい」
マサキ「あー、いや、その……色々迷惑かけたよな、俺って」
サイフィス(画面オフ)「そうですね。私の声を聞いてくださりませんでしたし」
マサキ「……すまん」
サイフィス(画面オフ)「ですが、今はこうしてあなたと話せるほど、同調しています」
マサキ「あ、そうか……同調してんのか、これ」
サイフィス(画面オフ)「ええ、おそらくポゼッションも、あなたの意志で発動できるようになるでしょう」
マサキ「……マジか」
サイフィス(画面オフ)「ですが、今のあなたではポゼッションは負担が大きすぎます。余り何度も使う事はできません」
マサキ「……昔、サイフラッシュで似た様な事があった気がするな」
サイフィス(画面オフ)「他にも、私の力が顕現される事により、アストラル界から、サイバスターへの干渉が可能になりました」
マサキ「干渉って……何が?」
サイフィス(画面オフ)「具体的にはアストラル装甲により、性能が上がり、一部の形状が変化します」
マサキ「要するにパワーアップしたのか?」
サイフィス(画面オフ)「俗な言い方をすれば、その通りです」
マサキ「……俗っぽくて悪かったな」
サイフィス(画面オフ)「いえ、あなたのその性質は、私にとっても好ましいものです。卑下する必要はありません」
マサキ「そう言うあんたは、なんかこう、浮世離れしてんな。いいトコのお嬢さんみてぇだ。まあ、もっともお嬢さんなのにお嬢さんっぽくないヤツが身近には多いんだが。リューネとか」

リューネ「マサキ! 聞こえてるよ! サイフィスと話してんの?」
マサキ「おっと? ん? リューネ、お前にはサイフィスの声って聞こえてねぇのか」
リューネ「うん。マサキの声しか聞こえない。なんか変な独り言みたい」
マサキ「うっ……」
サイフィス「ここまで同調する機会は、そうはないでしょうから、もしかしたら私とあなたが話せるのは、これが最後かもしれません」
マサキ「そ、そうか……」
サイフィス「ですが、私は常にサイバスターと共にあります。そして、私は全ての人々の想いを受け継いでいるのです。今生きている人々、そして、これからの未来に生きる人々……その事を、決して忘れないでください」
マサキ「ああ……わかってる」
サイフィス「それでは……また会う機会がありましたら……」
〔光、消滅〕
マサキ「ああ、機会があれば、な」
〔マサキ、変化〕
[イベント「サイバスターの新しい姿」]
マサキ「これが……サイバスターの新しい姿か」

リューネ「なんか……形が変わってる?」
ウェンディ「えっ……どうして……」
イブン「サイフィスの力、じゃな」
マサキ「ああ、サイフィスが力を貸してくれたってよ。ポゼッションに耐えられるようにしたんだと」
ウェンディ「ポゼッションに耐える……そんな事が可能になるなんて……」
マサキ「これからは短時間だけだが、俺の意志でポゼッションできるぜ」
ウェンディ「自分の意志でポゼッションを!? 設計した私でさえ、そんな事は想像してなかったのに……」
イブン「サイフィスとサイバスターは、よほど相性がいいと見える」
マサキ「? なんか、見慣れない武器があるぞ。いつの間に……」
ウェンディ「見慣れない武器? あ……もしかして……プラーナディスチャージ?」
マサキ「え? あ、ああ……そんな名前みてぇだな。なんで知ってんだ?」
ウェンディ「出力が足りなくて未完成だった武器よ。確かに回路は残しておいたけど、使えるようになるなんて……」
イブン「ポゼッションと同じで、サイフィスの置き土産じゃろう」
リューネ「精霊って、そんな事もできるの?」
イブン「高位精霊との契約が機体に及ぼす影響は、想像以上じゃな」
ウェンディ「……設計した私が言うのもなんだけど、サイバスターにはまだ謎があるのね」
〔マサキ、変化〕
リューネ「あれ? 戻っちゃった」
イブン「ポゼッション発動時の補助システムじゃからな。常時発動するものではないわい」
ウェンディ「……ポゼッションはプラーナの消耗が激しいから、あまり多用しない方がいいわね……いくら強化したと言っても、どんな影響があるか、わからないし」
マサキ「だろうな……なんか……疲れ……た……」
イブン「む、そろそろ限界か。マサキ、こちらの世界に戻すぞ」
マサキ「わりぃ……頼むまぁ……」
【戦闘マップ終了】

【シナリオエンドデモ開始】

イブン「うむ、ようやく目が覚めた様じゃな」
マサキ「ああ……ありがとうな、イブン婆さん」
イブン「礼を言うならマドックやティアン、ゼオルートにフェイル殿下が先じゃろう」
マサキ「ああ、そうだったな……みんな……すまなかったな。ありがとう」
イブン「それと、おぬしを心配して気遣ってくれた二人にもな」
マサキ「あ、ああ……リューネ、ウェンディ……ありがとう」
リューネ「あ、改まって言われると恥ずかしいって」
ウェンディ「え、ええ」
マサキ「いや、もう一度言わせてくれ。お前達がいなかったら、俺は二度とサイバスターに乗れなかった。本当にありがとう」
ウェンディ「マサキ……」
リューネ「そ、それよりさ! 具合はどう? 疲れてない?」
マサキ「ああ……わりぃ。実はかなり疲れててな……こうやってんのもつれぇ……」
〔人の倒れる音〕
リューネ「ま、マサキ!?」
ウェンディ「大変!!」
イブン「慌てずともよい。少々プラーナを使いすぎて、気を失っただけよ」
ウェンディ「で、でも、このままじゃ……」
イブン「そうじゃな……心配なら、プラーナを補給してやればよい」
ウェンディ「えっ? 補給ってその……例のあれ……ですか?」
リューネ「何? 例のあれって?」
イブン「口移しじゃよ」
リューネ「へぇ、口移しで……って、口移しっ!?」
ウェンディ「あ、あのねmあくまでその、応急処置であって、その……」
イブン「何を今更恥ずかしがっておる。以前に経験もあるじゃろうに」
リューネ「えっ? ウソッ!? 経験……あるの?」
ウェンディ「だ、だからそれは応急処置だから! 人工呼吸みたいなものだから!」
リューネ「ずるい、ウェンディさん!」
ウェンディ「だって、その……緊急事態だったし……3年近く前の話だし……」
リューネ「じゃ、今も緊急事態なんだから、あたしにもやり方教えて」
ウェンディ「えっ? や、やり方って、その……プラーナ補給の?」
リューネ「うん」
ウェンディ「そ、それはその……何て言うか……」
イブン「プラーナを腹に溜めるんじゃよ。確か、地上には丹田呼吸法というのがあると聞いたが、それと同じじゃ」
リューネ「あ、それならわかる」
イブン「で、腹に溜めたプラーナを、息と同様にゆっくりと注ぎ込む。人工呼吸とは違って、一息をゆっくりと、な」
リューネ「ゆ、ゆっくり……」
イブン「お主はプラーナの生成量が多いから、補給もたやすかろう」
リューネ「え、えーと……た、丹田に溜めるんだよね? すぅ~……」
イブン「ふむ、初めてにしては良くできておる。後はそのまま口移しで……」
リューネ「…………た、タンマ! やっぱその、いきなりはちょっと……」
イブン「ふむ、まあ、仕方なかろう。ではウェンディ。お主が手本を見せてやるがよい」
ウェンディ「てっ!? ててててて手本って、その、実際にやるんですか? わ、私が?」
イブン「それを手本というのじゃろうが」
ウェンディ「で、でもその……」
イブン「今は緊急事態じゃ、つべこべ言うでない。嫌なら、わしが手本を見せてやってもよいが?」
ウェンディ(テューディ)「…………」
イブン「ん? ウェンディ、お主……」
リューネ「えっ!? う、ウェンディさん!? どうしたの、その髪!?」
ウェンディ「え? 何? どうかしたの?」
リューネ「あ、あれ? 気のせい……かな?」
イブン「……ふむ。どうやら一部影響が残っておるようじゃな」
ウェンディ「えーと……何の事でしょうか?」
イブン「ウェンディ。お主の感情が昂ぶると、少しばかりテューディの時の感情が出てくるようじゃ」
ウェンディ「えっ!? で、でも、姉さんはもう……」
イブン「ああ、消えておる。だが、お主と共有しておった記憶までは消えておらんからな。じゃが心配は要らん。テューディそのものが出てくるワケではなく、お主の中のテューディに近い感情がちょっとした切っ掛けで顔を出すだけじゃ。少し性格がテューディ寄りになるやもしれんが、特に害は無かろうて。ほっほっほっ」
マサキ「ん……う~ん……」
リューネ「あ、マサキ! 気が付いたんだ! 良かった……」
マサキ「ん? ありゃ? 俺、寝てたのか?」
イブン「相変わらず呑気よのう。さて、それはそうとウェンディ。先程のテューディ化の件じゃが……」
マサキ「えっ? テューディ化……? 何だよ、それ」
イブン「そうか、マサキは見ておらんかったな。では、百聞は一見に如かずじゃ。ほれ、リューネ、ちょいこっちに来い」
リューネ「え? 何?」
イブン「……に寄りて連理の枝となさん。ほいっ!」
[イベント「な、なんかくっついちゃってる!?」]
リューネ「ひゃっ!?」
マサキ「うおっ!? こ、こらっ!? イブン婆さん、いきなり何を……」
〔布の擦れる音〕
リューネ「えっ!? あっ!? ちょ、ちょっと……な、なんかくっついちゃってる!?」
〔布の擦れる音〕
マサキ「うっ!? な、なんだ!? 離れねぇ……〔布の擦れる音〕いてててっ!! リューネ! 無茶すんなっ!」
リューネ「ご、ごめん!」
イブン「これこれ、ムダに暴れるでない。ちょいと細工をしたのでな。しばらくすれば離れるわい」
マサキ「細工ってなんだよっ!?」
イブン「それよりほれ、ウェンディを見てみい」

ウェンディ(テューディ)「…………」
マサキ「なぁっ!?」
リューネ「さっきとおんなじ……〔布の擦れる音〕あ、離れた」
イブン「ふむ。見たな? マサキ」
ウェンディ「あ、あら? 私、今何か……」
マサキ「ウェンディ、今、自分がどうなったか気付いてねぇのか?」
ウェンディ「え? あ……さっきイブン様が仰ってた、姉さんの影響が?」
マサキ「婆さん! どういう事だよ!?」
イブン「簡単に言えば、ウェンディの感情が鷹ぶると、テューディの記憶が影響を与えるんじゃよ。なに、別に悪い事ではないから安心せい」
マサキ「……ホントに実害はないんだろうな?」
イブン「それは保証するわい。ただ、少しばかり意地の悪い性格が出るかもしれんがの。まあ、ウェンディが普段が素直すぎるからその方が何かと良かろう。ほっほっほっ」
マサキ「笑い事じゃねぇっての!」
リューネ「……うひゃあ。これからもちょっと、気を付けた方がいいかも」
マサキ「ウェンディはいいのかよ、それで」
ウェンディ「え? 私? 私は別に……実害がないなら構わないけど」
マサキ「……まあ、ウェンディがいいってんなら俺は何も言う事はねぇけどな」
ウェンディ(そうか……姉さんは一部だけとはいえ、私の中に生きてるのね。嬉しい様な、複雑な様な……)
【シナリオエンドデモ終了】


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